八幡系(3) 起源 ― 2010年09月08日 23時30分36秒
近江八幡市のかわらミュージアムに、2体の巨大な鍾馗さんが展示されています。
この2体には銘が刻まれていて製作者と制作年代が明らかになっており、
文政11年(1828) 寺本仁兵衛五代目 兼武 とその弟 西堀栄三郎 の作。
八幡系のみならず、瓦鍾馗の中では、制作年代がわかっている最古の作品です。
また、この鍾馗さんは古いだけでなく、大きさやその技術の高さで、
後の鍾馗さんがとても及ばない水準に達しています。
金箔まで押した豪華な姿ですし、民家の屋根に乗せるには大きすぎるため、
勝手な推測ですが、注文に合わせて製作・販売しようとしたというよりは、
現在まで良好な保存状態で残されたことも考え合わせると、
腕試しとか、展示用とか、特別に作られたもののように思えます。
「寺本仁兵衛」は近江八幡で永らく瓦製造を営む寺本家の当主の代々の名乗りです。
かわらミュージアムのホームページによれば、寺本家はもともと京都深草で瓦屋を
営んでいたが、17世紀末ごろ八幡に移住してきて、寺院建築などに携わったそうです。
八幡で百年以上続いた家系が、この鍾馗さんを産みだしたのですね。
昨日、八幡系の五つの特徴を提示しましたが、この二体もすべて当てはまります。
1)棟端鬼瓦と一体で成形・焼成
2)棟巴瓦をまたぐように両足を広げて踏ん張っている。
3)細長い顔に、彫りが深くバタ臭い目鼻立ち。
4)七宝などの装飾文様を衣服に散らす。
5)袖や裾には装飾の細いストライプが入る。
これより古い鍾馗さんが失われたり、未発見だったりという可能性は残されていますが
この二体を八幡系鍾馗さんの源流としたいと思います。
参考:かわらミュージアム http://www.80000.jp/kawaramuseum/
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