【0089】知多半島のイケメン系2010年08月12日 23時55分46秒

【分布と記録数】 愛知県(80)、京都府(50)、三重県(6)、滋賀県(5)、
            奈良県(1) 合計 (142)
【リンク】 博物館・収蔵室

愛知県では、知多半島に特に多く見ることができます。
下が代表的なタイプで、整った姿型です。

常滑市蒲池町の鍾馗さん
(常滑市蒲池町)

鬢の長い毛が巻き上がって帽子を包むようになっているのが共通の特徴。

武豊町の鍾馗さん
(武豊町)

愛知県では上の双子のような、簡略化された、小振りのタイプが見つかります。

京都に行くと、よく似ていますが、少し小振りで動きも穏やかなタイプが見られます。
京都市上京区猪熊通の鍾馗さん
(京都市上京区猪熊通)
京都市上京区猪熊通の鍾馗さん
(京都市上京区猪熊通)

よく似ていますが、左手拳の位置が違いますね。
あと下は少し中心線がずれている感じ。腰痛になるぞ。



後は例外的なタイプとなります。

美浜町河和の鍾馗さん
(美浜町河和)
小振りで武豊町のに似ていますが、視線が下に行っています。この一体のみ。

東浦町藤江の鍾馗さん
(東浦町藤江)
鬼退治中。分布は知多半島に5体のほか、蒲郡近辺で4体、
さらに伊勢湾をはさんで津市に3体。

海上交通による鍾馗の伝播を思わずにはいられません。

南知多町中州の鍾馗さん
(南知多町中州)
立ち姿で剣を下におろしているのは、この一体のみ。


【0077】見た目がよく似たローカル鍾馗さん達2010年08月13日 23時53分23秒

【分布と記録数】 愛知県(47)、滋賀県(29)、三重県(15)、京都府(14)、
            岐阜県(4)、奈良県(4)、大阪府(1) 合計 (114)
【リンク】 博物館・収蔵室

#0078、#0080と似ていますが、直立不動のこれらに比べ、
右足に重心を乗せ、腰をひねっているので動きがあります。

東海市高横須賀町の鍾馗さん
(東海市高横須賀町)
帯紐がクロスしているのが特徴のこのタイプは
愛知県と三重県に多く見られます。

京都市北区紫竹西南町の鍾馗さん
(京都市北区紫竹西南町)
こちらは帯紐がクロスしていません。
京都はこのタイプが主流で、愛知県にも多い。

日野町上野田の鍾馗さん
(日野町上野田)
こちらは上にそっくりですが、なぜか左手を袖の中に隠しています。
左手が脱落した型をそのまま使い続けたのかも・・
滋賀県でよく見られます。

近江八幡市北元町の鍾馗さん
(近江八幡市北元町)
この鍾馗さんも帯紐がクロスしていますが、
丸顔にぎょろ目が特徴。
滋賀県を中心に分布。

蒲郡市府相町の鍾馗さん
(蒲郡市府相町)
他に比べやや大柄で、各所の細工が細かく、
新しい鍾馗さんではないかと推測しています。
蒲郡ほか、東三河で少数を確認しています。

養老町大巻の鍾馗さん
(養老町大巻)
これはこの1体だけの突然変異。
釉薬は措くとして、各部のバランスが他と微妙に異なっています。

【0104】知多半島限定分布の小さな鍾馗2010年08月14日 23時35分44秒

【分布と記録数】 愛知県(89)、三重県(8)、滋賀県(4)、 合計 (101)
【リンク】 博物館・収蔵室

分布数をご覧の通り、ほぼ愛知県限定、それも大部分は知多半島に残されています。
凸凹が少なく、型による大量生産に適した形です。


鬼を持たず、剣を脇に捧げ持つタイプが、細かく見ていくと4種類。

名古屋市緑区大高町の鍾馗さん
(名古屋市緑区大高町)


東浦町緒川の鍾馗さん
(東浦町緒川)


東海市高横須賀町の鍾馗さん
(東海市高横須賀町)


常滑市榎戸町の鍾馗さん
(常滑市榎戸町)

比較
左拳の位置とその角度、帯紐先端の形、剣の形が識別のポイント。
(拡大してご覧ください)

鬼を従え、剣を脇に捧げ持つタイプ

大津市中央の鍾馗さん
(大津市中央)
このタイプだけは愛知県にはなく、滋賀県大津市で2体記録。


剣をおろしたタイプ

高浜市青木町の鍾馗さん
(高浜市青木町)


剣を振り上げたタイプ

知多市八幡の鍾馗さん
(知多市八幡)

【0065】正真正銘 奈良限定2010年08月15日 23時18分37秒

【分布と記録数】 奈良県(74)
【リンク】 博物館・収蔵室

奈良県ではよく目にしますが、他では一体も見つかりません。
これは意外に珍しいこと。
交通が発達してからは、窯元や瓦屋さんの商圏も拡がり
基本、地域に根ざした商売をしていても、引き合いがあれば
隣県へ出向くことはやぶさかではないはずで、
偶然なのか、途絶えたのが古いのか。確かめようもありません。

橿原市北八木町の鍾馗さん
(橿原市北八木町)
こちらが大部分を占める標準タイプ。

五條市今井の鍾馗さん
(五條市今井)
これは標準タイプの変り種で鬼瓦と一体焼成。
へら跡もやや派手。一品ものです。

王寺町本町の鍾馗さん
(王寺町本町)
こちらは別タイプでややずんぐりむっくり。

川西町唐院の鍾馗さん
(川西町唐院)
ずんぐりタイプのバリエーション。
胸に「九字」を切っています。一品ものです。

橿原市高殿町の鍾馗さん
(橿原市高殿町)
これもずんぐりタイプのバリエーション。
細部意匠が違っていますが、基本スタイルは同じ。
一品ものです。

五條市須恵の鍾馗さん
(五條市須恵)
これもずんぐりタイプのバリエーション。
一品ものです。

これら細部の違いは型から抜いたあと、
職人さんがへらを片手にいろいろ工夫した結果。
瞬間芸みたいなもので、無数のバリエーションが存在します。
気にし過ぎてもきりがないし、なるべく尊重して区別してあげたいし。

悩ましいところです。

【0099】愛知県限定 強面鍾馗2010年08月16日 22時38分56秒

【分布と記録数】 愛知県(61)、三重県(4)、岐阜県(1)、京都府(1)、静岡県(1)、
 合計 (68)

【リンク】 博物館・収蔵室

ほとんど愛知県限定の鍾馗さんで、愛知県内では広い範囲に見られますが、
近隣県ではわずかに見られるのみ。
私が見つけた、静岡県唯一(新居町)の鍾馗さんがこのタイプ。

豊田市花園町の鍾馗さん
(豊田市花園町)

ごついですね。鬼もしっぽを巻いて逃げ出しそう。

京都市下京区間之町通の鍾馗さん
(京都市下京区間之町通)

これまたこわもて。剣も大きくなってパワーアップ。

南知多町中州の白黒鍾馗さん
(南知多町中州)

白黒鍾馗。
左は上と同じ鍾馗さん。右は鬼の足をつかんでいます。

西尾市桜町の鍾馗さん
(西尾市桜町)

上右の鍾馗さんから鬼を取ると、この鍾馗さんになります。

東浦町石浜の鍾馗さん
(東浦町石浜)

これは不鮮明な写真で自信がない。上と同じかもしれませんが、
頭のシルエット、帯紐の形 など違っているように見えます。

『みちくさ学会』2010年08月17日 23時32分20秒

「みちくさ学会」というライブドア主催のサイトに寄稿させてもらうことになりました。

設立趣旨を転載します。

【みちくさ学会】とは?


路地、看板、標識、坂道などは...興味のない方にとってみれば風景の一部に過ぎません。しかし、これが好きで好きでしょうがない人にとっては魅力ある対象です。「みちくさ学会」は、その道のブロガーが興味の対象としてる対象物の面白さと、その鑑賞術を紹介。“みちくさ”の楽しみ方を提案するブログメディアです。


執筆陣の方々が取り上げる対象も、比較的メジャーなものから、
何それ?というものまでさまざま。   鍾馗もこっちだな(^^;

ここのところ、マニアックに走り過ぎている当ブログと、
うまくバランスを取れればいいなと思っています。

みちくさ学会 : http://michikusa-ac.jp/

【0509】田舎の素朴な親父風2010年08月18日 23時55分37秒

【分布と記録数】 三重県(42)、滋賀県(17)、愛知県(2)、岐阜県(2)、奈良県(1)、
 合計 (64)

【リンク】 博物館・収蔵室

分布は三重県と滋賀県にほぼ限定されます。
三重県では桑名から伊勢まで広い範囲で見られ、
滋賀県では彦根、甲賀など、三重県に近い地域で見られます。

上目遣いのまなざしと、風に翻る髭がトレードマーク。

バリエーションは多く、11種類を数えています。
今日は代表的な3種を紹介します。

四日市市塩浜の鍾馗さん
(四日市市塩浜)
これが一番多いタイプで、64体のうち半分ほどはこれ。
がっしりしてます。


東員町山田の鍾馗さん
(東員町山田)
次に多いのがこれ。シンプルです。
ちょっと飾りっ気がなさすぎかも。


津市久居東鷹跡町の鍾馗さん
(津市久居東鷹跡町)
3番目に多いのがこちらです。
様式的には他とはちょっと違いますね。

【0509】田舎の素朴な親父風 つづき2010年08月19日 23時32分30秒

昨日の続きでよく似た鍾馗さんを紹介しますが、
今日登場するのは「街でよく見る」とはいかないレアものばかり。
どれも一品もの、もしくは、発見数が数体以内です。


四日市市蔵町の鍾馗さん
(四日市市蔵町)

標準タイプにそっくりですが、何故か小脇に本か弁当箱のようなものを
抱えています。何でしょうか?

甲賀市土山町大野の鍾馗さん
(甲賀市土山町大野)
滋賀県産はなんとなく「とさか」が派手なように思います。

四日市市馳出町の鍾馗さん
(四日市市馳出町)

唯一、柔和な顔つきの兄弟。

松阪市魚見町の鍾馗さん
(松阪市魚見町)

こちらの鍾馗さんも悩みがありそう。
剣は腹に。

松阪市駅部田町の鍾馗さん
(松阪市駅部田町)

顔小さめ。剣は捧げ持っていたのでしょうがLOST。
ちなみに「駅部田町」は「まえのへたちょう」と読みます。
超難読。

彦根市小野町の鍾馗さん
(彦根市小野町)

剣振り上げタイプ。
大量生産の鍾馗さんでは、欠損を防ぐために
決してこのように剣を身体から離すようなデザインはしません。

小野町は中山道に沿った小さな集落です。

津市香良洲町小松の鍾馗さん
(津市香良洲町小松)

昨日紹介した、東員町山田の鍾馗さんそっくりの、剣振り上げタイプ。

香良洲町は地図で見るとわかりますが、地理の教科書にでてきそうな
典型的な三角洲がそのまま町になっています。
(現在は津市に合併)


彦根市日夏町の鍾馗さん
(彦根市日夏町)

大棟の鬼瓦と一体となったタイプ。
欠損した剣を貧相な針金で補っています。
これでは鬼にもなめられそうですが・・

【0157】温厚な老爺風2010年08月20日 22時39分11秒

【分布と記録数】 愛知県(40)、三重県(18)、滋賀県(2)、京都府(2)、
            岐阜県(1) 合計 (63)

【リンク】 博物館・収蔵室

【0155】【0159】 とよく似ていますが、この鍾馗さんが一番柔和な印象です。
細かいバリエーションはありません。

南知多町山海の鍾馗さん
(南知多町山海)

知多半島を中心とする愛知県と三重県各地で見ることができます。
伊勢湾をはさんだ両県には共通の鍾馗さんも多く、
かつては海上交通による瓦運搬が行われたり、鬼師の行き来が
あったのでは?と推理していますが、今のところ証拠はなし。

【0124】鏡餅のような鍾馗さん2010年08月21日 00時10分30秒

【分布と記録数】 三重県(51)
【リンク】 博物館・収蔵室

三重県でしか見つかっておらず、それも北部 桑名、四日市あたりが分布の中心で
南限は津市あたりです。

丸い腹に丸い顔、鏡餅に見えてきます。
(雪だるまという説もありましたが、顔はいかついのでちょっとイメージわかない)

じつはこの鍾馗さんの見分け方については 博物館・収蔵室 で説明してありますので、ここでは省略。

写真のみ紹介いたします。
いなべ市員弁町西方の鍾馗さん
(いなべ市員弁町西方)

四日市市海山道町の鍾馗さん
(四日市市海山道町)

鈴鹿市徳居町の鍾馗さん
(鈴鹿市徳居町)

四日市市波木町の鍾馗さん
(四日市市波木町)