鍾馗さんの探し方 その42014年02月02日 22時05分00秒

鍾馗さんの置かれる位置
2010年1月11日の記事を一部改訂しました。

このブログを見て鍾馗さんに興味をもっていただいた方から、
「気になって民家を見てみるのだけれど、なかなか見つからない」
というコメントをいただいたことがあります。

そこで、今回はどこに鍾馗さんが置かれるのか
基本パターンを図示しますのでご参考にしてください。
拡大画像でご覧ください。

①一階の屋根(小屋根)
  京都の鍾馗さんは大部分がここ。
  この写真でもありますね。
②大棟(二階の屋根)
  棟瓦の上に直立させる場合と、
  棟瓦に立てかけるように置く場合とがあります。
  愛知、岐阜はここが主流。
  三重、滋賀、奈良、大阪では①②が混在しています。
  町場では①、郊外では②が多い傾向があります。
  街中では家屋が密集していて、大棟の上は見えないですからね。
③大棟の端
  あまり多くないですが、ここにある鍾馗さんは珍品の可能性大。
④入母屋の破風
  切妻屋根の場合もこの位置に置かれることあり。
  ここにあるのはお寺鍾馗がほとんどで、正面にお寺があります。
⑤玄関
  以前は「ここはめったにありません。」と簡単に片づけていましたが、
  地域によってはかなり見られるようです。
   「玄関鍾馗」の紹介記事

その他に、塀の四隅に置かれている場合もありますが
これは新しいものが多いような気がします。

バックナンバー
 鍾馗さんの探し方 その1
 鍾馗さんの探し方 その2
 鍾馗さんの探し方 その3

「玄関鍾馗」2014年02月03日 20時35分33秒

瓦鍾馗の置かれる場所としては、
京都市内に代表される街場に多い「軒」と
郊外に多い「棟」が大部分で全体の九割がたはこのどちらかに置かれています。

探す時にも視線はこの両者の間をさまよいます。

昨年秋、雪だるまさんに奈良を案内していただいた際、
雪だるまさんの見つけた鍾馗に玄関に置かれた鍾馗さんが
意外に多いことがわかりました。

さらに、12月に徳島県を探訪した際には、見つけた八体の鍾馗さんすべてが
玄関に置かれていました。

これまでごく例外だと思っていた「玄関鍾馗」が
地域によっては一般的だということに、ここに至って気がつきました。
こうなると気になってしまうので、手間のかかる仕事ですが、
これまでに見てきた鍾馗さんの写真を見直して、
玄関鍾馗さんをピックアップしたところ、合計74体を確認しました。
内訳は京都府が30体、大阪府 17体、徳島県 8体、奈良県 7体 など。
2500体以上を記録している愛知県ではわずかに1体でした。

そのうちの何体かを写真でご紹介。

和歌山市加太町の玄関鍾馗
和歌山市加太町
シンプルな玄関に堂々と鎮座

阿波市吉野町の玄関鍾馗
阿波市吉野町
この地域に典型的な四方蓋造りの民家

京都市上京区の玄関鍾馗
京都市上京区
生活感あふれる軒先に。話し相手には事欠かない。

京都市北区の玄関鍾馗
京都市北区
今風の家では屋根に鍾馗さんの置場がない?

京都市上京区の玄関鍾馗
京都市上京区
このお宅も置場に困った口か?

京都市北区の玄関鍾馗
京都市北区
粽の風化具合に歴史を感じます。
電球が灯ったらまぶしくて暑そう。

京都市中京区の玄関鍾馗
京都市中京区
京風の小ぶりな鍾馗さんは玄関にさりげなく納まります。

生駒市北田原町の玄関鍾馗
生駒市北田原町
一方、大ぶりの鍾馗さんは玄関に置かれると存在感があります。

泉大津市東港町の玄関鍾馗
泉大津市東港町
このサイズだと玄関ではちょっと窮屈で、居心地が悪そう。

五條市今井の玄関鍾馗
五條市今井
窮屈と言えばこの鍾馗さん。あまりに不憫です。


魔除に鍾馗札を玄関先にあげる風習は瓦鍾馗より前に普及していたようです。
師匠・服部さんのホームページからの引用

「魔除け」「疫病除け」の鍾馗札(紙に鍾馗の絵姿を摺ったもの)については、享和二年(1802)滝沢馬琴が江戸から京阪、伊勢の方に旅をした時に書いた、「 羈旅漫録」に、「遠州より三州のあひだ人家の戸守りはことごとく鍾馗なり、かたはらに山伏某としるしたるもあり」とあり、又、喜多村信節の「嬉遊笑覧」(1830)にも「・・・今も尾張熱田の民家にみなこの画像を戸に押す」とあって、遠州、三州、尾張のあたりでは「疫病除け」のためにみな鍾馗札を戸に貼っていたことがわかります。

そしてこれは馬琴も書いているように、山伏が鍾馗札を売り歩いていたらしく、昭和四十年、澤田四郎作氏の「戸守りの鍾馗」にも大阪のあびこ観音の参道で山伏姿の男が鍾馗札を売っていると書かれていますので、かなり長い間つづいていたことになります。 (現在でもあびこ観音では鍾馗札を売っております)

この鍾馗札と瓦鍾馗の関係はよくわかりませんが、三州は瓦の一大生産地なので、そこで鍾馗札が次第に瓦鍾馗に変わっていったのか、あるいは京都あたりで瓦鍾馗が流行してまわりに広まっていったのか、これはもうすこし考えてみたいと思います。

ただ、鍾馗札と瓦鍾馗ではあげる理由がすこし違うようにも考えられます。

奈良の古い集落を歩きますと、瓦鍾馗はお寺や神社のまわりか道の突き当たりにあり、それ以外の民家にはありません。これは最初の「文文集要」の鬼瓦対鍾馗のように、お寺の鬼瓦や神社の霊力に対してあげているので、「魔除け」「疫病除け」ではないようです。

寺の大きな鬼瓦に対しては戸口に貼る紙のお札よりも、同じく屋根に瓦の鍾馗像をあげた方がより効果的なのは確かで、このような用途で作られた瓦鍾馗がやがて鍾馗札に変わって一般の民家にもあげられるようになっていったのかもしれません。

***

鍾馗札が瓦鍾馗に置き換わっていったとすれば、
もう少し玄関鍾馗が多くてもいいような気がするのですが、
瓦鍾馗の据え付けは多くは瓦葺き職人さんによって行われるので、
職人さんとしては屋根葺きと同時に屋根に据える方が、
仕事の手間がかからないということかもしれません。

これから、鍾馗さんを後から買ってきてあげることが増えるようなことがあれば、
家人でも作業ができる玄関鍾馗さんが多くなるかもしれませんね。


玄関の上に作られた小ぶりの入母屋屋根の破風部分に
鍾馗さんが置かれるケースもかなりあるようです。
広義の「玄関鍾馗」とも言えますがこちらの分析はまたの機会に。

2014/2/9 西尾市寺津2014年02月12日 23時20分25秒

西尾市寺津町は西尾市の西郊で三河湾にも近く、
古くから農業・漁業の他、製塩も営まれていたようです。
町並みは農村の趣きで、あまり漁村の雰囲気は感じられません。

このあたりの鍾馗探訪は3回目、周辺の巨海町、刈宿町なども歩きました。

寺津神社 西尾市寺津町

国道247号線で町内を北上すると、道路が緩くカーブする突き当りに
寺津神社の鳥居が鎮座しています。
ランドマークとしてとっても印象的です。


新種の発見はなく、再録が中心となりました。
#0110
寺津町内でこの二体を記録しているだけの珍しい鍾馗さんです。


#0076
こちらもこのあたりに分布が限定される珍しい鍾馗さんです。
左二つが寺津町、仲が刈宿町で発見。右は少し離れた蒲郡市の鍾馗さんですが
他には西尾市内に二体見つかっているだけです。


#0089
#0089は各地でたくさん見つかる量産型ですが、今回寺津町で見つけた鍾馗さん(左)は、標準型の右のタイプに比べて野暮ったい印象です。
常滑市大谷の一体に続く二体目の発見です。

これらの鍾馗さんは型で取った後、
職人さんがひとつひとつヘラで修正/仕上げをしたのだと思われ、
シルエットは同じでも表情などは一体々々、結構違っています。


ちなみにこのあたり、鍾馗さん以外にもみちくさ系のお楽しみがいろいろあって

常福寺大仏

常福寺大仏
常福寺の大仏(刈宿町)
像高 7m 台座込みだと14m
昭和三年の建立


この近所に「ぶっ飛んだ」鬼を従えた閻魔堂があることを知っていたので
探してみたものの見つからず。帰ってから地図で調べたら、すぐ裏の道を歩いていたのに気づきませんでした。自分にがっかりです。
という訳で、ご覧になりたい方はこちらをどうぞ。


鍾馗にもこんな奴、よくいます。

(2月15日追記)
その後、この閻魔堂のことをネットでいろいろ見ていたら
決定版とも言うべき情報に行き当たりました。
 見事な取材で謎を明らかにしています。必読。


三河線廃線跡

2004年に廃止された名古屋鉄道三河線はこの寺津集落を通っていました。
廃線跡はレールは撤去されたものの、まだ明らかに廃線跡とわかる痕跡が
たくさん残っています。
三河線廃線跡 2014.2.9 寺津駅付近

この日歩いたコースでは都合4回、廃線跡を横切りました。

三河線廃線跡 2014.2.9 北寺津駅
ここはホームの痕跡があって、ちょっと調べてみると
「北寺津駅」があったところのようです。
路線の廃止は2004年ですが、
この駅は早くも1944年に営業を休止してしまったそうで
使われていたのは70年も前のことです。
経過した時間の割りには姿をよくとどめています。



中日ドラゴンズのレジェンド

岩瀬仁紀投手がここ寺津町の出身です。
町を歩いていても「岩瀬xx」という看板や表札をやたら目にしますので、
彼が根っからのじもピーであることがわかります。

地元中学にはこんな記事もありました。





鍾馗さんもオリンピック!(1)2014年02月14日 22時00分23秒

ソチオリンピックもようやく盛り上がってきて寝不足の方も多いのでは。

金だ銀だと世間は騒がしいので、ここは鍾馗さんにも参加してもらって
メダルを競ってもらいましょう。

とはいうものの瓦鍾馗さんは走れないし飛べないし。
しばし考えましたが、結局大きさ競争をしてもらうことにしました。(;^ω^)

まずは銅メダルから。

大和郡山市今国府町の鍾馗さん
大和郡山市今国府町

推定身長80cm。
測ったわけではないので、「推定」が心苦しい。
写真もまずくて大きさが全然伝わってこないのですが、
豪邸の軒で屋敷の大きさに負けない存在感を放っています。

続いて銀メダル

大町市八坂の鍾馗さん
大町市八坂

推定1m強

大町市八坂の鍾馗さん
遠くから見るとこんな感じ

この鍾馗さんも豪邸の屋根で堂々の存在感。



さて、金メダルはというと。

京都市左京区某所の鍾馗さん
京都市左京区


京都市左京区某所の鍾馗さん

推定170cm
もうちょっといい場所に置いてあげたい気もしますが、京都洛中の建て込んだあたり、この鍾馗さんをあげるにふさわしい場所はそうそうないですわな。


番外。
昨年、京都五条に鍾馗神社が開かれました。
ここのご神体は身長160cm!
まだ管理人未見ですので五輪不参加としましたが、
4年後のメダル候補ですね。


考えてみれば日本からしか参加していないから、オリンピックは誇大広告ですねぇ。
「国体」くらいが適当でしょうが、まあいいか。

一応、つづきがあります。

鍾馗さんもオリンピック!(2)2014年02月15日 22時00分30秒

鍾馗さんオリンピック第二日!
といっても最終日です(笑)
競技はおおかた予想されているとは思いますが
小ささ比べ・・・

冷たい視線にひるむことなく、まずは銅メダルから。

滋賀県野洲市北桜の鍾馗さん
野洲市北桜

小さい鍾馗さんも測ることができないので目分量ですが、
バックの瓦でおおよその寸法が想像できます。
棟に積む熨斗瓦(のしがわら)で一枚の厚さは大体2センチ程度ですから
この鍾馗さんの身長は8センチ弱といったところ。
小さいですねぇ。


超望遠で引き寄せて見るので鍾馗さんとわかりますが、
肉眼では瓦の汚れくらいにしか見えません。


つづいて銀メダル

栗東市六地蔵の鍾馗さん
栗東市六地蔵

これも8センチ弱といったところ。
3位とは僅差ですね。

そして堂々の優勝は。

滋賀県湖南市石部西の鍾馗さん
湖南市石部西

熨斗瓦3枚分、6センチちょっと。
親指くらいのサイズです。

この鍾馗さんを見つけた時、ファインダーで見てはもちろんのこと、
カメラの液晶画面で見ても、鍾馗さんなのかどうか、半信半疑でした。
小さすぎてオートフォーカスのピントが合いません。


カラスが巨大に見えます。
これで鬼を退治できるのでしょうか?


この種目、偶然ですが滋賀県勢のメダル独占となりました。