【0071】石造りまである謎の鍾馗2010年08月25日 23時20分10秒

【分布と記録数】 三重県(25)、愛知県(24)、大阪府(3)、岐阜県(2)、
           奈良県(2)、神奈川県(1)  合計 (57)
【リンク】 博物館・収蔵室

松阪市魚見町の鍾馗さん
(松阪市魚見町)
これが標準タイプ。
愛知県、三重県では各地で目にすることができます。
東海地方では他の鍾馗さんにもよくあるのですが、
釉薬のかかったカラー鍾馗さんがおおいのも特徴で、
この鍾馗さんにも、赤、青、緑、橙 といろいろ見つかっています。

三浦市三崎の鍾馗さん
(三浦市三崎)
私の知る神奈川県唯一の鍾馗さん。
三崎町の商店街を紹介するサイトで見かけてはるばる訪ねました

標準タイプに比べると、握る左手の向きが違っていて、
サイズもやや大きめだった気がします。
他では見たことがありません。

御所市御堂魚棚町の鍾馗さん
(御所市御堂魚棚町)

こちらはなんと石造。
瓦製に比べて平板な印象はやむをえないとして、
細部の特徴はまぎれもなく標準タイプと一致。

奈良県では瓦製の標準タイプは見つかっていないため、
謎だらけの鍾馗さんです。
瓦職人が石を刻むとも思えないため、
石工が瓦鍾馗をお手本に作ったのでしょうか?

【0097】端正な現代鍾馗2010年08月24日 23時37分14秒

【分布と記録数】 愛知県(42)、三重県(5)、滋賀県(4)、岐阜県(1)、
           奈良県(1)  合計 (53)
【リンク】 博物館・収蔵室

愛知県中心に東海地方に分布。

桑名市赤須賀の鍾馗さん
(桑名市赤須賀)

左足を踏み込んで力が入っています。
流れるような造形に無理はなく、作者の力量は確かです。

またこの鍾馗さんの場合、他で見られるようなこまごまとした
バリエーションは全然なく、近代的製法で作られたんでしょうね。

わがままな鍾馗探索者としては、もう少し遊んでくれると面白いのですが。

【0258】ほぼ奈良県限定の"大"ちゃん2010年08月23日 22時36分21秒

【分布と記録数】 奈良県(49)、大阪府(7)、京都府(1)  合計 (57)
【リンク】 博物館・収蔵室

大阪、京都でも少数見つけていますが、
大阪では柏原、八尾。京都では木津と奈良の隣町ばかり。
奈良県内では大和郡山市を中心として県西北部に多く見られますので
このあたりで生産されていたのだと思います。

大和郡山市小南町の鍾馗さん
(大和郡山市小南町)
これが標準タイプです。帽子に二つ並ぶ排気口のような穴がトレードマーク。


以下の鍾馗さんはトレードマークと表情で、兄弟とわかりますが、
いずれも発見は1体きりの突然変異です。

桜井市桜井の鍾馗さん
(桜井市桜井)
左手の下に銘が見えます。
へぼい写真で判読できなかったため、再訪しましたが、
家ごとなくなっていました。

柏原市本郷の鍾馗さん
(柏原市本郷)
握った拳を微妙に上げたこのポーズは類例がありません。
鬼じゃないんだからちょっと変ですね。

奈良市大柳生町の鍾馗さん
(奈良市大柳生町)

それにしてもこの帽子。ガンダムっぽくて不思議です。
何を見ての造形なんでしょう。

【0509】田舎の素朴な親父風 つづき2010年08月19日 23時32分30秒

昨日の続きでよく似た鍾馗さんを紹介しますが、
今日登場するのは「街でよく見る」とはいかないレアものばかり。
どれも一品もの、もしくは、発見数が数体以内です。


四日市市蔵町の鍾馗さん
(四日市市蔵町)

標準タイプにそっくりですが、何故か小脇に本か弁当箱のようなものを
抱えています。何でしょうか?

甲賀市土山町大野の鍾馗さん
(甲賀市土山町大野)
滋賀県産はなんとなく「とさか」が派手なように思います。

四日市市馳出町の鍾馗さん
(四日市市馳出町)

唯一、柔和な顔つきの兄弟。

松阪市魚見町の鍾馗さん
(松阪市魚見町)

こちらの鍾馗さんも悩みがありそう。
剣は腹に。

松阪市駅部田町の鍾馗さん
(松阪市駅部田町)

顔小さめ。剣は捧げ持っていたのでしょうがLOST。
ちなみに「駅部田町」は「まえのへたちょう」と読みます。
超難読。

彦根市小野町の鍾馗さん
(彦根市小野町)

剣振り上げタイプ。
大量生産の鍾馗さんでは、欠損を防ぐために
決してこのように剣を身体から離すようなデザインはしません。

小野町は中山道に沿った小さな集落です。

津市香良洲町小松の鍾馗さん
(津市香良洲町小松)

昨日紹介した、東員町山田の鍾馗さんそっくりの、剣振り上げタイプ。

香良洲町は地図で見るとわかりますが、地理の教科書にでてきそうな
典型的な三角洲がそのまま町になっています。
(現在は津市に合併)


彦根市日夏町の鍾馗さん
(彦根市日夏町)

大棟の鬼瓦と一体となったタイプ。
欠損した剣を貧相な針金で補っています。
これでは鬼にもなめられそうですが・・

【0509】田舎の素朴な親父風2010年08月18日 23時55分37秒

【分布と記録数】 三重県(42)、滋賀県(17)、愛知県(2)、岐阜県(2)、奈良県(1)、
 合計 (64)

【リンク】 博物館・収蔵室

分布は三重県と滋賀県にほぼ限定されます。
三重県では桑名から伊勢まで広い範囲で見られ、
滋賀県では彦根、甲賀など、三重県に近い地域で見られます。

上目遣いのまなざしと、風に翻る髭がトレードマーク。

バリエーションは多く、11種類を数えています。
今日は代表的な3種を紹介します。

四日市市塩浜の鍾馗さん
(四日市市塩浜)
これが一番多いタイプで、64体のうち半分ほどはこれ。
がっしりしてます。


東員町山田の鍾馗さん
(東員町山田)
次に多いのがこれ。シンプルです。
ちょっと飾りっ気がなさすぎかも。


津市久居東鷹跡町の鍾馗さん
(津市久居東鷹跡町)
3番目に多いのがこちらです。
様式的には他とはちょっと違いますね。

【0065】正真正銘 奈良限定2010年08月15日 23時18分37秒

【分布と記録数】 奈良県(74)
【リンク】 博物館・収蔵室

奈良県ではよく目にしますが、他では一体も見つかりません。
これは意外に珍しいこと。
交通が発達してからは、窯元や瓦屋さんの商圏も拡がり
基本、地域に根ざした商売をしていても、引き合いがあれば
隣県へ出向くことはやぶさかではないはずで、
偶然なのか、途絶えたのが古いのか。確かめようもありません。

橿原市北八木町の鍾馗さん
(橿原市北八木町)
こちらが大部分を占める標準タイプ。

五條市今井の鍾馗さん
(五條市今井)
これは標準タイプの変り種で鬼瓦と一体焼成。
へら跡もやや派手。一品ものです。

王寺町本町の鍾馗さん
(王寺町本町)
こちらは別タイプでややずんぐりむっくり。

川西町唐院の鍾馗さん
(川西町唐院)
ずんぐりタイプのバリエーション。
胸に「九字」を切っています。一品ものです。

橿原市高殿町の鍾馗さん
(橿原市高殿町)
これもずんぐりタイプのバリエーション。
細部意匠が違っていますが、基本スタイルは同じ。
一品ものです。

五條市須恵の鍾馗さん
(五條市須恵)
これもずんぐりタイプのバリエーション。
一品ものです。

これら細部の違いは型から抜いたあと、
職人さんがへらを片手にいろいろ工夫した結果。
瞬間芸みたいなもので、無数のバリエーションが存在します。
気にし過ぎてもきりがないし、なるべく尊重して区別してあげたいし。

悩ましいところです。

【0077】見た目がよく似たローカル鍾馗さん達2010年08月13日 23時53分23秒

【分布と記録数】 愛知県(47)、滋賀県(29)、三重県(15)、京都府(14)、
            岐阜県(4)、奈良県(4)、大阪府(1) 合計 (114)
【リンク】 博物館・収蔵室

#0078、#0080と似ていますが、直立不動のこれらに比べ、
右足に重心を乗せ、腰をひねっているので動きがあります。

東海市高横須賀町の鍾馗さん
(東海市高横須賀町)
帯紐がクロスしているのが特徴のこのタイプは
愛知県と三重県に多く見られます。

京都市北区紫竹西南町の鍾馗さん
(京都市北区紫竹西南町)
こちらは帯紐がクロスしていません。
京都はこのタイプが主流で、愛知県にも多い。

日野町上野田の鍾馗さん
(日野町上野田)
こちらは上にそっくりですが、なぜか左手を袖の中に隠しています。
左手が脱落した型をそのまま使い続けたのかも・・
滋賀県でよく見られます。

近江八幡市北元町の鍾馗さん
(近江八幡市北元町)
この鍾馗さんも帯紐がクロスしていますが、
丸顔にぎょろ目が特徴。
滋賀県を中心に分布。

蒲郡市府相町の鍾馗さん
(蒲郡市府相町)
他に比べやや大柄で、各所の細工が細かく、
新しい鍾馗さんではないかと推測しています。
蒲郡ほか、東三河で少数を確認しています。

養老町大巻の鍾馗さん
(養老町大巻)
これはこの1体だけの突然変異。
釉薬は措くとして、各部のバランスが他と微妙に異なっています。

【0089】知多半島のイケメン系2010年08月12日 23時55分46秒

【分布と記録数】 愛知県(80)、京都府(50)、三重県(6)、滋賀県(5)、
            奈良県(1) 合計 (142)
【リンク】 博物館・収蔵室

愛知県では、知多半島に特に多く見ることができます。
下が代表的なタイプで、整った姿型です。

常滑市蒲池町の鍾馗さん
(常滑市蒲池町)

鬢の長い毛が巻き上がって帽子を包むようになっているのが共通の特徴。

武豊町の鍾馗さん
(武豊町)

愛知県では上の双子のような、簡略化された、小振りのタイプが見つかります。

京都に行くと、よく似ていますが、少し小振りで動きも穏やかなタイプが見られます。
京都市上京区猪熊通の鍾馗さん
(京都市上京区猪熊通)
京都市上京区猪熊通の鍾馗さん
(京都市上京区猪熊通)

よく似ていますが、左手拳の位置が違いますね。
あと下は少し中心線がずれている感じ。腰痛になるぞ。



後は例外的なタイプとなります。

美浜町河和の鍾馗さん
(美浜町河和)
小振りで武豊町のに似ていますが、視線が下に行っています。この一体のみ。

東浦町藤江の鍾馗さん
(東浦町藤江)
鬼退治中。分布は知多半島に5体のほか、蒲郡近辺で4体、
さらに伊勢湾をはさんで津市に3体。

海上交通による鍾馗の伝播を思わずにはいられません。

南知多町中州の鍾馗さん
(南知多町中州)
立ち姿で剣を下におろしているのは、この一体のみ。


【0098】 0094の弟分2010年08月07日 22時46分15秒

【分布と記録数】 愛知県(45)、滋賀県(8)、三重県(7)、岐阜県(6)、
            京都府(4)、兵庫県(2)、大阪府(1)、奈良県(1) 合計 (74)
【リンク】 博物館・収蔵室
愛知県に多く分布。【0094】にそっくりですが、
こっちのほうが、多少細面。


4種記録していて、こちらがスタンダードタイプです。
津市河芸町南黒田の鍾馗さん
(津市河芸町南黒田)

次は、何が違うのか問われると困るのですが、
ノミ跡もシャープなスタンダードタイプより、まろやかな印象(なんじゃそりゃ)
写真では判別しにくいのですが、表情もちょっと柔和。
三重県で2体だけ記録。
津市河芸町南黒田の鍾馗さん
(津市河芸町南黒田)

こちらは上2体と比べると、垂れ下がる帯紐の先の開き方が違います。
京都市中京区竹屋町通の鍾馗さん
(京都市中京区竹屋町通)

「びみょー」な違いばかりのここまでに比べると
最後の鍾馗さんは腰をひねって違いは明らか。
苦しい説明は不要ですね(^^;
なかなか決まっています。
常滑市栄町の鍾馗さん
(常滑市栄町)

【0172】三重県北部に分布する振り上げ系鍾馗さん2010年08月05日 23時52分14秒

【分布と記録数】 三重県(64)、愛知県(11)、奈良県(6)、滋賀県(6)、
            京都府(4)、岐阜県(5) 合計 (96)
【リンク】 博物館・収蔵室

三重県、それも北部の桑名市、四日市市付近に偏在します。

スタンダードタイプはこちら。
桑名市大福の鍾馗さん
(桑名市大福)

以下の2種は数が少なく、作りは粗雑です。

東近江市布施町
(東近江市布施町)

京都市上京区柏清盛町の鍾馗さん
(京都市上京区柏清盛町)

この2種は分布の中心、北勢地方から遠く離れた土地で見つかります。
中は愛知、滋賀
下は京都、奈良

三重県から遠ざかるほど、質が下がっていくようです。
何故だろう?