2013/3/2 奈良・大和郡山(1) 朝日鍾馗さん再訪 ― 2013年03月04日 23時42分28秒
一時的に春の陽気がやってきたと思ったら週末は冬に逆戻り。
それでも鍾馗狂はなんのその、鼻水たらしながらも探索に出かけます。
今回は奈良市と大和郡山市の市街地を訪問しました。
どちらももう4,5回は行ったことがあるでしょうか。
ところで鍾馗さんには四種類あります。
北向き、東向き、南向き、西向き(なんじゃそりゃ)
南向きの鍾馗さんは優等生で、撮影の時間や天気を選びません。
逆に北向き、それも大棟の上の鍾馗さんは常に逆光で撮影は大変。
強いて言えば薄曇りの柔らかい光の時がチャンスですが、あらかじめ予測するのは難しいので、行ってみての幸運を期待するしかありません。
東向きであれば朝方、西向きは夕方が撮影好適時間帯となりますが、
今回訪問した奈良市街はこれまで探訪の終着点になることが多くていつも夕方。
東向き鍾馗さんはいつも逆光でした。
そのため今回は奈良市街の東向き鍾馗さんを目当てに朝のうちを狙って再訪です。
ところが予報で晴れかと思っていたら意外に曇りがちで、朝のうちは光量不足。
お天気は思うに任せませんね。
それでも今、持っているカメラはかなり逆光でもがんばってくれるので、
カメラさんに期待してあちこち撮りまくってきました。
以下はその成果。左が旧作、右が今回の撮影です。
奈良市東木辻町 左:2007年9月22日撮影 #118 東向
奈良市東木辻町 左:2007年9月22日撮影 #118 東向
上の鍾馗さんと並んで誕生寺をにらんでいます。
奈良市中辻町 左:2005年9月17日撮影 #039 東向
奈良市紀寺町 左:2007年6月30日撮影 #659 北向
この鍾馗さんは前は空をにらんでいましたが、
起こしてもらえて顔がよく見えるようになりました。謝々!
奈良市十輪院町 左:2006年10月13日撮影 #661 北向
奈良市十輪院町 左:2006年10月13日撮影 #262 北向
奈良市十輪院町 左:2007年6月30日撮影 #662 北向
この鍾馗さんは全国有数の難撮影鍾馗さん。現地で見ていただくと分かりますが
3階の屋上に置かれていて、相当離れないと姿が見えません。しかも北向き・・
興善寺境内から南を見て探してください。
奈良市福智院町 左:2009年9月19日撮影 #004 東向
今回の撮影で、衣服全体にとても繊細な文様が彫り込まれている事がわかりました。
さらに、欠損していた右手が復活しています。
屋根瓦も葺き替え(焼き直し?)られているようなので、
その際に補修されたのでしょうか。
後補の右手はちょっと不自然な感じもしますが、ともあれめでたい。
奈良市佐紀町 左:2006年5月2日撮影 #458 東向
電車で奈良から郡山に向かう途中、西大寺駅で途中下車して寄り道。
健在確認できたのにはほっとしましたが、蜘蛛の巣は7年経ってもそのまま。。
大和郡山市下三橋町 左:2006年1月4日撮影 #347 西向
ここは郡山市街地ではなく、郊外の集落。立派な高塀造りの家に乗っています。
西向きなので午後に訪問。
大和郡山市矢田町通 左:2009年9月19日撮影 #149 北向
大和郡山市高田町 左:2007年10月27日撮影 #261 西向
大和郡山市高田口町 左:2007年9月22日撮影 #836 北向
この鍾馗さん、置かれ方が変わっています。長くなったので続きは次回にします。
2013/3/2 奈良・大和郡山(2) いた! ― 2013年03月05日 20時49分55秒
昨日の最後の鍾馗さん、発見にはささやかなドラマがありました。
もともと、
こんな感じで電柱の脇、屋根の最下部、変なところに
量産品の #125 と仲良く並んでいました。 2007年9月22日撮影
ところが今回通りかかると
もともと古びた建物だったのに、伝統様式ながら、ま新しい建物に替っています!
いたはずのあたりに鍾馗さんの姿も見当たりません。
この日は朝から何体かの鍾馗さんの消失を確認しており、またか~(;;)と
気分も落ち込みました。
ところが帰り道、路地から出てきてもう一度眺めると、
あれ、奥に何かいる。
おぉ~
隣にいた仲間は見当たらなかったのですが、彼だけは残ったようです!
古い鍾馗さんは棲家と共に失われる一方なので、こうしたサバイバー鍾馗さんを
見つけると探索の疲れも吹き飛びます。
2013/3/2 奈良・大和郡山(3) 失われた鍾馗さん ― 2013年03月07日 22時18分10秒
今回の探訪は再訪、再々訪のところばかりで、なかには七年ぶりというところも
あったのである程度覚悟はしていましたが、いくつかの鍾馗さんが失われていました。
古い写真を掲載して偲びます。
奈良市高御門町 #037 2007年6月30日撮影
いたはずのあたりの屋根瓦はどれも葺き替えられていて
こざっぱりとしてしまいました。
大和郡山市豆腐町 #857 2007年10月27日撮影
いたはずの町屋はま新しいアパートに建て替り、鍾馗さんの姿はありませんでした。
大和郡山市高田町 #856 2007年10月27日撮影
この鍾馗さんのいた屋根も葺き替えられ、のっぺり綺麗になっていました。
ここに掲げる以外にも、いくつか失われたと思われる鍾馗さんがあったのですが、
記憶にあやふやなところもあるので、もう一度確かめてからにしたいと思います。
**
こちらは失われたわけではないけれど
大和郡山市洞泉寺町 #350 2006年1月4日撮影
切れ長の目のイケメン鍾馗さんですが、三年後には・・
2009年9月19日撮影
さらに今回
2013年3月2日撮影
おそらくは妓楼と思われる、三階建の見事な建物。保存にむけての取り組みも始まっているようなので、屋根の上にもそのうち目を向けてもらえることを期待します。
2013/3/9 田原本~奈良 ― 2013年03月12日 00時30分13秒
先週に引き続き、奈良県の探訪です。
それにしても先週は寒くて予定していた中街道歩きを取りやめたくらいなのに、
この日は暑いくらい。
朝はそれなりに寒いので上着を着ているのですが、すぐに邪魔になってしまいました。
この日の奈良の最高気温が23.1℃で1週間前は7.9℃。
15度以上も違っていては身体もとまどいます。
この日のコースは田原本から中街道を北上、大和郡山市若槻町あたりから東に外れて近鉄奈良駅まで。もちろん街道歩きが目的ではないので、周辺の集落をあちこちふらふら訪ねながら、ジグザクに北をめざします。
街場を外れるとこんな景色。
遠くの集落のお寺の屋根をめざします。
道端には春を待ちかねたオオイヌノフグリやハコベなどがちらほら。
奈良市東九条町 #1457として収録
この日、新たに見つけた鍾馗さんは18体。新種はこの鍾馗さんだけでした。
再確認した鍾馗さんは42体。
いっぽう、以下の二体は消失してしまったようです。
天理市庵治町 2006年2月撮影 #393
ごらんのとおりの逆光ボケボケ。
再会したかったのですが、瓦葺き替えで失われたようです。
天理市二階堂上ノ庄町 2008年2月撮影 #324
二体あげていたお宅。
もう一体は健在でしたが、破風にあったこちらの鍾馗さんだけなぜか行方不明。
鍾馗ニュータウン 第二弾 ― 2013年03月19日 00時29分19秒
「通勤中の車窓からたくさんの鍾馗さんがまとまっているのを発見しました!」
会社同僚のNさんから耳よりな情報を得て、さっそく行ってきました。
場所は刈谷市某所。
私も電車に乗って目を凝らしていると、新興住宅街の屋根の上、確かに鍾馗さんがたくさんいるのが確認できました。
行ってみると、住宅街の中で9体の鍾馗さんが確認でき、すべて同じ鍾馗さんです。
#0134の釉薬がけ。
こういった「鍾馗ニュータウン」はかなり前に豊橋で見つけて以来、2例目です。
すべての家にあるわけではなく、それなりに歴史を経た住宅街で、
建て替えられた家にはあがっていないようです。
こんな感じで分布していました。左下に少し外れてひとつあるのは
住宅街の外の古い家で別の鍾馗さんです。
国土地理院の「国土変遷アーカイブ」でタイムスリップしてみると
この住宅団地は、1981(昭和56)年ころに開発されたようです。
1981に東側から建築が始まり、1982にはかなり家が増えていますが、
鍾馗さんの載っている家は、1981に既に建っている家の範囲ときっちり一致します。
最初の造成で建った家々にはおそらくデベロッパーの勧めで
鍾馗さんが揚げられたのでしょう。サービスだったかもしれないですね。
30年以上経過し、世代も代わって建て替えもかなり進んでいます。
「オールドタウン」化するニュータウンが多い中、
世代交替で家が更新されていくのはある意味、街が健康な証拠かもしれません。
変哲のない住宅団地にもささやかな歴史が見られます。
(予告)日経新聞で紹介されます ― 2013年03月25日 21時23分09秒
今度は日本経済新聞で紹介していただくことになりました。
掲載予定は3月29日(金)。
(これまで二回ほど予定日が変わっていますので、あくまで予定です・・)
朝刊最終面の文化面に結構大きい記事で掲載されます。
お楽しみに!
2012/3/23 紀州ツアーその1 ― 2013年03月26日 20時53分07秒
私の住む愛知県から和歌山県は隣の隣の県にあたるのですが結構遠くて、どう行っても三時間くらいはかかります。
しかも奈良や大阪とは異なり鍾馗さんは少なく、一日歩いてたった一体とかシビアな探索となるため、なかなか足が向きません。
県内在住のonigawaraさんと、大阪在住の鍾馗友達のおとんさんがこまめに探索して見つけた鍾馗さんを、おとんさんがまとめて一気にご案内いただけるということで、
喜び勇んで出かけてまいりました。
いちにち、おとんさんの車で駆け巡ってこの日見た鍾馗さんは32体。
ほとんどがローカルの希少鍾馗さんです。
この日見せていただいた全32体を何回かに分けて、見た順に全部紹介いたします。
なお、特記ないものはすべて、onigawaraさんかおとんさんの発見です。
01.橋本市橋本 【#1458】
再開発中の地域の、とても古い家にあがっています。この鍾馗さんはなんとか生き永らえることができそうですが、町並みは壊滅状態。詳しくはこちら
細工が細かく、とても古い鍾馗さんである可能性があります。

銘あり。「紀州 東家 瓦与」
東家(とうげ)はこの鍾馗さんから程近いところにある地名。
地元の「瓦与」という屋号の瓦屋さんで製作されたのでしょう。
02.橋本市橋本 【#0189】
01のすぐ近くにありますが、この鍾馗さんのいる家は再開発中の町並みにぽつんと取り残されています。残念ながら風前の灯です。
2009年以来、4年ぶりの再々訪で健在を確認しました。
このお宅もとても由緒のある家のようですから、しばらくは安泰でしょうか。
04/05.橋本市九度山 【#1459】
大棟両端に対であがっていました。
こうして並べてみると 03.橋本市古佐田 とは表情や両手の造形がそっくりですね。
同一グループに分類したほうがいいかも?
この二体は明らかに兄弟です。
鍾馗さんのかぶる巾または帽子については、最近服部さんがおとんさんの掲示板で
考証を披露しておられますが、この鍾馗さんのような三本角はどの時代にもなかった、この鍾馗さんを作った職人さんのオリジナル。
こちらは探索中に発見した量産品です。
この鍾馗さんは2006年以来、約7年ぶりの再会です。
苔むすお顔は7年前からそのまま、特に苔が増殖してはいないようで
要はほったらかしなんですね。
豪邸の軒、正面ではなくお寺があるわけでもない横を向いて、中途半端な位置におられました。力強い姿なので目立つところに置いてもらえば映えると思うのですが。
橋本市東家にそっくりの兄弟を、吉野町上市には双子の兄弟を見つかっています。
浜千鳥の文様が衣服に彫り込まれていて、独特の個性になっています。
続きはまた。
その2 へ
その3 へ
2012/3/23 紀州ツアーその2 ― 2013年03月27日 23時00分36秒
昨日からの続きです。
橋本市を起点に和歌山県内を少しづつ南下します。
顎ひげが糸巻きみたいになっています。
酒屋さんの屋根にあがっています。
どうでしょう?職人さんの腕前が光ります。
二重まぶたのシャープな線に感嘆です。
13と同じ家の裏にあります。
表の鍾馗さんとは、まったく異なる作風。
今はほとんど地元の人以外、通るとも思えない裏通りですが、家人のお話では
もともとは裏の道が街道筋で、店はそちらに向けてやっていたそうです。
反対側に新道ができてから、店も反対側に移動したとのこと。
いずれにせよ、おとんさんが家人に話を伺わないことには、
この鍾馗さんが世の人の目に触れることはなかったでしょう。
足元には銘。
「福井 中原安太郎作」とあります。
福井という集落が近くにあるので、おとんさんと話をしたご主人が
電話帳で子孫がいないか、調べてくれたそうですが、見つからなかったそうです。
#134は大体鬼を踏みつけていますが、この鬼のいないタイプは
大阪南部から和歌山にかけてよく見られます。
16.紀美野町下佐々 【#0491】
鬼瓦に遮られて見えない足元には鬼がいる(はず)
昨年、同市且来でonigawaraさん、おとんさんと一緒に発見した鍾馗さんと瓜二つですが、細部はちょっと違うような気も・・
どうでしょうかね?
17と同じお宅の破風にはこの鍾馗さんがおられます。
陰になっていて暗いので、おとんさんが三脚を用意してくれました。
ほんとうに大名旅行です。
鍾馗博物館では、昨日紹介した橋本市橋本の鍾馗さん(02)と兄弟としていますが、
こちらは袖まくりがトレードマークで、服部さんからは別種では?と疑義あり。
表情はそっくりですが、他人の空似かもしれません。
茨木市島に続く二例目となる希少鍾馗さん。
こちらのほうがうまく写ったので、博物館の写真は差し替えます。
こちらも二例目です。もう一体は泉南市信達牧野で、#0505に属する親戚は
和泉地方各地で見つかっています。
この鍾馗さんは 15.紀美野町福田と同じです。
長くなりました、まだ続きます。
その3 へ
2012/3/23 紀州ツアーその3 ― 2013年03月28日 22時03分08秒
和歌山ツアーその3 ひたすら鍾馗・鍾馗ですが、いま少しお付き合いを。
ふしぎ鍾馗さんですね。髭がなんだか訳のわからないことになってます。
湯浅は老舗の醤油屋さんがたくさんある町。
この鍾馗さんも醤油屋さんにあがっていました。堂々とした姿の写真から、
大きな鍾馗さんだろうと思っていたら、意外に小さくかわいい鍾馗さんでした。
「湯浅おもちゃ博物館」の壁の触れる位置にあります。
こちらは25の向かい側でこちらも触れることができる位置。
おとんさんによれば、いずれも町並み整備に合わせ、
どこかの家から提供されたものではないかとのことです。
27/28.みなべ町北道 【#1470】
ツアー直前にonigawaraさんから情報提供があり、急遽足を延ばしてきました。
既に廃業したスナックの、大棟の両端にあがっています。
腰をおろして目の小さな穏やかな印象の鍾馗さんでした。
29.熊取町小谷北 【#1471】
帰途、立ち寄ってもらった鍾馗さん。
右側に大きく銘が刻まれています。
銘の詳細はおとんさんのブログを参照ください。
30.熊取町小谷南 【#1170】
こちらは29のすぐ近く。三年ぶりの再訪で健在を確認しました。
前回にくらべ、柔らかい光で細部がよくわかります。
31.岸和田市上白原町 【#0084】
こちらは帰り道の途中で見た量産タイプ。
32.和泉市国分町 【#0116】
ツアーの最後に立ち寄ってもらったのはこちらの鍾馗さんですが、
軒下のうえ、夕方の光量不足(+腕前不足)でブレブレ・・
助手席に座っているだけで一日にこれだけの希少鍾馗さんを目にすることが
できるとは、本当に果報者です。改めておとんさんに多謝。