八幡系 (5) 八幡系鍾馗の拡がり2010年09月11日 23時45分40秒

かわらミュージアム所蔵の2体の鍾馗さんが
八幡系鍾馗の源流であろうとは、前に述べたとおりですが、
それでは八幡系鍾馗はどこにどれくらいあるのでしょうか?

これまでに八幡系と思われる鍾馗さんを100体強、見つけていて
京都でショーケースに収まっている1体以外を除き、すべて滋賀県内のものです。

八幡系分布図

特に優れた鍾馗さんを赤、および黄色の★で示してあります。
緑の★はほとんどが、八幡系の特徴を備えた普及品(型もの)です。

この分布図から、近江八幡に始まった八幡系が、
技巧を凝らした一点ものから、型ものの普及品の登場で
県内各地に拡がっていった様子がうかがえます。

2010/9/11 吉良町、西尾市2010年09月12日 22時20分43秒

今年の猛暑は私の鍾馗探索にも多大な影響を与え、
得意とする、ひたすら歩く探索は6月中旬の梅雨入り以降、
ほとんどできていません。

昨日も予報は猛暑日でしたが、しびれを切らして決行することにしました。
名鉄 上横須賀駅から西尾駅まで、あっちこっちふらふらしながら
25km、5時間歩く予定。

愛知県は鍾馗の分布域が広く、灯台下暗しでまだ未訪地を多く残しています。
今回探訪するあたりも、田園風景の中に明治・大正期以前からある農村集落が
点在し、周囲の探索結果からも多少の発見は期待できそうな地域です。

ここのところ朝夕は多少秋めいてきていたのですが、
この日は朝の7時から結構暑いな~。
10分くらい歩いただけで結構汗をかいてきたぞ。

日射しは容赦なく照りつけ、歩きながらも少しでも日陰に入ろうと、
ちょっとした家の陰、木陰を縫うように歩いていくのですが、
こういうとき、田んぼ道はさえぎるものがなく、過酷です。


鍾馗さんは多くはないもののコンスタントに目にします。
あまり珍しいものは見つからないですが、これは愛知県では仕方がないこと。
この三河地域に瓦鍾馗の風習が普及したのは、
他の地域に比べ最近のことのようで、あまり古い鍾馗さんはないのです。
鍾馗の産地を近くに控えていながら、これは不思議なこと。

吉良町駮馬の鍾馗さん
(吉良町駮馬) まだらめ:難読地名ですね

昼が近づくにつれ、日射しは一層強くなり、
悪いことに水分補給するためのコンビニはおろか、
自販機一台見つからない・・田舎だぁ~

こうなると疲れが一層増し、しばらく歩いてようやく自販機を
見つけたときにはほっとすると同時に、既に気持ちが萎えてます。
これではただ行程どおりに歩を進めているだけで、
鍾馗さんを見つけるのに必要な集中力も注意力もゼロですから、
結果は自明。見つかるものも見つからない。

西尾のひと駅手前の福地駅付近まで来たとき、
これ以上先に進む気力は失せており、
ぼんやりと駅のベンチに腰掛けて、電車を待つのみでした。

この日は残念ながらあと3kmを残し、酷暑に敗退。
発見した鍾馗さんは16体、最高気温は35.9℃でした。

早く涼しくならないかな~

これ欲しい!! AR.Drone2010年09月13日 23時23分05秒


AR.Drone

9/16 国内発売のParrot社 AR.Drone なるもの。
iPhoneをコントローラにして操縦する、ラジコンヘリコプターみたいなものです。

カメラを2機搭載していて、iPhoneで機体からの景色を見ながら操作できる。

"AR"は最近はやりの拡張現実(Augmented Raelity)ですね。
対戦型ゲームに使われるとめちゃ面白そう。

詳しい説明は難しいので 公式サイト などご覧ください。

ところで鍾馗狂いのオヤジが、
何を唐突にこんなものに触手が動いたかというと、
これってタケコプターじゃないですか(自分は飛べないけど)。

鍾馗探訪で悔しいのが、せっかく珍しい鍾馗さんを見つけながら、
どうしてもまともな撮影ポイントが得られない時です。

特に2~3m高い位置に上がることができれば、正面から撮影できるのに!
ということは結構頻繁にあるものです。

たとえば こんなの とか こんなの

内蔵カメラは解像度に限界があるだろうから、
これに小型軽量のカメラを装着すれば、ばっちり。
実現には技術課題は多そうですが、楽しそうだな~

iPhone も持ってないけど、iPod touchでも使えるみたいだから
今持ってる Nano を買い換える手もあるし。


とはいえ、最大の問題はこんなの飛ばして鍾馗さんの写真撮ってたら、
問答無用で警察に通報されるな・・・・


八幡系 (6) 直系優品 安土町西老蘇2010年09月14日 23時46分07秒


安土町西老蘇 八幡系鍾馗さん
近江八幡市(旧安土町)西老蘇

昨年暮れに発見した、八幡系の最高峰ともいえる鍾馗さん。
中山道武佐宿のすこし東、街道沿いの旧家の屋根でお寺を睨んでいます。

かわらミュージアムの元祖八幡系と非常に近い様式を保っています。
これでもかとばかりに装飾を施し、飾り立てた姿は勇ましく華やか。
歌舞伎役者のようです。

画面右下部分には銘が入っています。
「光定」 「清輔」 (輔の字はこの写真では見えません)

どんな人かはわかりませんが、寺本仁兵衛の直系なのは
間違いないでしょう。

この旧家には、反対側にも八幡系の特徴を示す謎の人物像。
安土町西老蘇 鍾馗の裏の謎の人物像
鍾馗ではなく、仙人みたいな雰囲気ですが由来は不明。
類似の人物像を滋賀県内で他に2体見つけています。

しばらく、八幡系鍾馗さんの数々を紹介していきます。

Twitter ってよくわからない(><)2010年09月15日 23時17分02秒

帰宅して自宅パソコンのメールをチェックすると、
見慣れないメールが。
「○○があなたをフォローし始めました」
??

みちくさ学会のサイトにはTwitterへのリンクがあるし、
先日の総会でお会いした事務局、何人かの執筆者の方の名刺には
TwitterのIDが書かれている。

もちろん存在は知っていたが、特に興味もなかったけれど
帰宅してすぐにアカウントは取ってみました。
とはいえ別にやることもないし、話し相手がいるわけでもないから、
一か月近く完全放置。

何も書き込みしてないアカウントを誰がフォローするんだろう?


あっ、総会でご一緒したトマソンの川浪さんだ!
少数派の喫煙仲間で、懇親会も近くの席だったし。
しかしどうしてIDがわかったんだろう?

ともあれ、それから3時間、いろいろとさわってみましたが、
ツィッター用語はよくわからないし、まだどうもピンとくるものがありません。

まあ、ぼちぼち慣れていきましょう。
ちなみに
twitter: kite5656

何もないから来てもあまり意味がないですよ~(^^;

八幡系 (7) 執念の彫り2010年09月16日 23時36分47秒

東近江市綺田の鍾馗さん
(東近江市綺田)

この鍾馗さんも典型的な八幡系の優品。
棟端瓦と完全に一体化しています。

この鍾馗さん、細部へのこだわりがすごい。
東近江市綺田の鍾馗さん右手
右手部の拡大
鍾馗さんらしくない、細くて筋張った指の質感は
一般的な瓦鍾馗さんとは別次元。
波打つ袖と衣服の装飾も深く鋭く彫り込まれています。

東近江市綺田の鍾馗さん左手
こちらは左手、左足。
執念を感じます。

残念ながら、銘は確認できませんでした。


この鍾馗さんのある綺田は、「びわ湖空港」建設予定地すぐ近くの
静かな集落です。
空港計画は白紙撤回のようで、余所者の勝手な感想ですが、
完成のあかつきにはこの静かな集落と鍾馗さんがどうなっていたかと思うと
ほっとしています。

はっきり言って交通の便はめちゃ悪いところ。
こんなところに空港作ったところで、
滋賀県の人だってあまり使わないでしょ。

八幡系 (8) 八幡系元祖の作品?2010年09月17日 22時10分01秒


東近江市五個荘塚本町の鍾馗さん
東近江市五個荘塚本町

ちょっとこの鍾馗さんにはそぐわない、小さな公民館風建築に乗っています。

鋭い目つきがかっこいい鍾馗さんですが、
典型的八幡系というわけではありません。

先に示した八幡系の五つの特徴
1)棟端鬼瓦と一体で成形・焼成
2)棟巴瓦をまたぐように両足を広げて踏ん張っている。
3)細長い顔に、彫りが深くバタ臭い目鼻立ち。
4)七宝などの装飾文様を衣服に散らす。
5)袖や裾には装飾の細いストライプが入る。

該当するのは1)と2)だけです。
しかしこの鍾馗さん、横に回るとこんな銘が彫られています。
東近江市五個荘塚本町の鍾馗さん(銘)

AR.Drone があればもう少しきちんと撮れるかもしれませんが、
(賀)村 仁兵衛 と読めます。
もうお分かりの方もいらっしゃると思いますが、
かわらミュージアム収蔵の八幡系元祖
寺本仁兵衛 作ではないかと思われます。
もちろん代々の名乗りなので、これだけで時代はわかりません。
また、寺本家は八幡の多賀村に居を構えており、
「賀」の字は定かではありませんが、「多賀村」だといいな・・

背後の棟瓦とは色合いも異なり、別の場所から移されたのではないかと思います。

同じ建物の反対側にはもう1体。
東近江市五個荘塚本町の鍾馗さん

こちらは銘は確認できませんが、様式から見ても明らかに同一作者です。

東近江市五個荘塚本町の鍾馗さん(クローズアップ)
バストショット。
驚いたのは眼の表現。
瞳孔まで表現されていて、白目の部分には光沢があるようです。
まさか仏像みたいに玉眼を埋めたりはしないと思うので、
ここだけ釉薬を乗せたのか、はたまた磨いたのか。

いずれにせよ、並々ならぬ表現へのこだわりが感じられ、
「八幡系恐るべし」との感を深くします。


八幡系 (9) 野生的な外戚2010年09月18日 22時19分03秒

近江八幡市船木町の鍾馗さん
近江八幡市船木町【0546】 詳しい紹介はこちら

安土町小中の鍾馗さん
近江八幡市(安土町)小中【1216

どちらも八幡系の特徴をよく備えています。
まとめて紹介したのはその雰囲気が非常に似通っているためです。

ただし正統派八幡系鍾馗さん(たとえば)に比べると、表情はワイルドで荒武者風。
いっぽう衣服のディテールはそっくりで、かつ非常に緻密。

さらに二つとも左右の脚部は分割され、胴とは別に焼かれています。
これは元祖八幡系と共通の手法で、八幡系でも他にはほとんど見られない特徴。
(ただし船木町のほうは正確には胴と両足の二分割ですが)

さらに、
安土町小中の鍾馗さん【部分】

小中の鍾馗さんの右手の上あたりには、小さく「舟木」の銘。
船木町の鍾馗さんとの関係を強く想像させられます。

ところが、
近江八幡市船木町の鍾馗さん【部分】

船木町の鍾馗さんの右足には「瓦外」の銘。
ここに「舟木」と入っていれば話はわかりやすいのですが・・・(^^;


情報は少ないながらも、こうして色々推理(想像?)できるのも
八幡系鍾馗さんの楽しいところです。

2010/9/18 西舞鶴・綾部2010年09月19日 23時15分08秒

おとんさんのお友だち、姫さん夫妻が舞鶴を訪問した際に
鍾馗を見つけたことがきっかけとなって、
さっそくおとんさんと一緒に行ってまいりました。

快晴、気温もかなり下がって快適なドライブとなり、
敦賀・小浜経由で三時間半ほどで西舞鶴に到着。

先着されたおとんさんと落ち合うと、
おとんさんは既に何体かを発見したとのこと。
姫さん発見の鍾馗さんに案内いただきます。

舞鶴市西の鍾馗さん
舞鶴市西の鍾馗さん

舞鶴市西の鍾馗さん
(舞鶴市西)

一軒のお宅で左右に並んでいましたが、
手作りゆえ、そっくりでも微妙に異なる。
齢重ねた一卵性双生児といった趣きです。

舞鶴市新の鍾馗さん
(舞鶴市新)

つぶらな瞳が若々しい?
猫のような腕もキュート。

その後も順調に鍾馗さんが見つかります。
舞鶴市朝代の鍾馗さん
(舞鶴市朝代)
京都風。重量感あふれるどっしりとしたお姿。


舞鶴市竹屋の鍾馗さん
(舞鶴市竹屋)

左右についた「リボン」が何とも不可解。
そういえば髭の形も不思議。

丹波地方に鍾馗はないと思っていましたが、
先入観を吹き飛ばす、うれしい誤算でした。

午後は綾部に足をのばしましたが、こちらでは収穫なし。

八幡系 (10) 八幡系の極北2010年09月20日 23時12分32秒

八幡系鍾馗といえば、高い技術を惜しげもなく駆使した
技巧派なのですが、中にはこんな八幡系も存在します。
八幡系が到達した一方の極地とでもいえましょう。

彦根市清崎町の鍾馗さん
(彦根市清崎町)

条件1)、2)に該当するので一応、私的分類では八幡系に入るのですが、
相当な異形。

最初見たときは鍾馗なのかどうかも定かでなく、
しばらくは前にたたずんで眺めていました。

彦根市清崎町の鍾馗さん(顔)
顔。人間離れしてます。
髭は八本足みたいで、本気で最初はタコだと思った。

彦根市清崎町の鍾馗さん(手)
素朴極まりない剣を持つ右手の造作。上にちんまりとあるのは肘?

先週紹介したこちらの鍾馗さんとは、比べるのが申し訳ないほどです。


それでも、形式といい、大仰なポーズといい、
作者が八幡系の基準作品を何か見て、その再現を試みたと想像します。

写真が普及する前の時代、せいぜいスケッチか、記憶だけを頼りに
工房で作った鍾馗さんは、オリジナルとは似ても似つかぬものになりましたが、
こうしてユニークな作品として結実し、100年後の物好きを喜ばせています。